日本で結婚した夫婦がオランダへ移住するとき、「日本の戸籍上は夫婦だから、配偶者はそのまま一緒に住めるのでは」と考えがちです。けれども、オランダで90日を超えて暮らす場合は、婚姻している事実とは別に、INDの配偶者・パートナー滞在許可を確認する必要があります。オランダ語では家族呼び寄せを広く gezinshereniging と呼ぶことがありますが、実務上はINDの「Residence permit for partner」、つまり配偶者、登録パートナー、未婚パートナー向けの滞在許可として整理すると迷いにくいです。
この記事では、2026年6月15日に確認したIND、NetherlandsWorldwide、在オランダ日本国大使館、Government.nlの公式情報をもとに、日本で婚姻届を出した夫婦が何を準備するかをまとめます。私は2025年にオランダ移住の行政手続きを整理したとき、ビザそのものよりも、日本の戸籍制度とオランダ側の証明書文化をつなぐ部分で時間を使いました。この記事は一般的な準備の目安であり、個別案件の許可、審査結果、法的効果を断定するものではありません。
配偶者帯同で最初に確認する前提
配偶者の家族帯同は、結婚証明だけを提出する手続きではありません。INDは、夫婦関係が確認できることに加えて、スポンサーの資格、収入、同居、年齢、公共秩序、必要書類を見ます。日本で婚姻済みの夫婦にとっては、関係性の説明が未婚パートナーより単純になりやすい一方、日本の婚姻情報をオランダ側が読める形にする作業が残ります。
申請対象は「オランダで一緒に暮らす配偶者」です
INDの配偶者・パートナー滞在許可は、オランダ国籍者または有効なオランダ滞在許可を持つ人がスポンサーとなり、外国籍の配偶者やパートナーをオランダへ呼び寄せる制度です。日本人同士の夫婦でも、片方が高度人材、自営業、研究、永住などの滞在許可を持ってオランダに住む場合、もう片方を配偶者として帯同させる形が考えられます。
ただし、スポンサーの滞在目的によっては、家族を呼べない、または就労権が制限される場合があります。INDは、オペア、ワーキングホリデー、文化交流、インターン、季節労働など一部の滞在目的ではパートナー呼び寄せができないと案内しています。結婚しているかどうかだけでなく、スポンサー本人の滞在カードの種類を先に確認することが重要です。
日本国籍者はMVV免除でも、滞在許可は別です
日本国籍者はINDのMVV免除国に含まれています。MVVは90日を超えてオランダに滞在する人が通常必要とする入国ビザですが、日本人はこのMVVが不要です。そのため、日本のオランダ大使館でMVVステッカーを受け取ってから渡航する国籍とは、実務の順番が変わることがあります。
ここで誤解しやすいのは、「MVV免除」と「長期滞在許可不要」は違うという点です。日本人は短期滞在で入国しやすい一方、90日を超えて配偶者として暮らすには、INDの滞在許可が必要です。私なら、航空券や退職日を先に固定する前に、申請日、審査見込み、短期滞在の上限、住居契約開始日を一枚の表にして確認します。
婚姻していても、同居と同住所登録が中心になります
INDは、オランダで配偶者と一緒に住み、自治体に同じ住所で登録することを条件として示しています。日本では婚姻後も住民票や住所が一時的に別々というケースがありますが、オランダの配偶者滞在許可では、オランダで共同生活をすることが制度の前提です。
そのため、住居探しは単なる生活準備ではなく、申請条件に関わる準備です。賃貸契約で二人の登録が認められるか、大家または主契約者の同意が必要か、自治体のBRP登録で婚姻や出生に関する書類を求められるかを、早めに確認してください。Government.nlは、BRPに婚姻、出生、住所変更などの個人情報が記録されると説明しています。
日本で結婚した夫婦の必要書類
日本で結婚した夫婦の準備で一番つまずきやすいのは、婚姻そのものの証明です。日本では戸籍に婚姻情報が記載されますが、オランダ側の役所やINDがそのまま日本語の戸籍を読んでくれるわけではありません。提出先がINDなのか、自治体なのか、在オランダ日本国大使館なのかにより、同じ婚姻事実でも求められる形が変わることがあります。
婚姻を示す日本の公文書を用意します
NetherlandsWorldwideは、日本の出生、婚姻、離婚、死亡に関する記録は、戸籍または該当する自治体から取得できると説明しています。日本で婚姻届を出した夫婦の場合、一般には戸籍謄本、婚姻届受理証明書、婚姻証明に相当する文書が論点になります。ただし、どの書類が最終的に必要かは、提出先が指定する書類名と用途によって異なります。
在オランダ日本国大使館は、身分事項に関する証明として、出生証明、婚姻要件具備証明、未婚証明、婚姻証明、離婚証明などを案内しています。用途には、オランダにおける滞在許可申請、市役所への住民登録、婚姻手続き等が含まれます。紙の戸籍謄本を使う場合、婚姻証明や婚姻要件具備証明では発行日から3か月以内の原本が必要と案内されています。電子戸籍パスを使う場合でも、提出先によっては基になった戸籍原本やアポスティーユを求めることがあるため、証明書を取る前に提出先へ確認した方が安全です。
アポスティーユと翻訳は順番が重要です
NetherlandsWorldwideの日本文書ページでは、日本の文書をオランダで使うには、日本国外務省のアポスティーユによる認証が必要と説明されています。日本語の文書は、オランダ語、英語、フランス語、ドイツ語のいずれかへ翻訳する必要があります。ここで重要なのは、アポスティーユを先に取り、その後に翻訳する流れです。日本国外務省は翻訳文を認証しないため、翻訳を先に作ってから全体にアポスティーユを付ける、という考え方は基本線から外れます。
翻訳についても注意が必要です。NetherlandsWorldwideは、日本にはオランダの制度上の sworn translator がいないため、オランダ側で認められる宣誓翻訳者を探すよう案内しています。日本で翻訳する場合とオランダで翻訳する場合で、追加のリーガリゼーション要否が変わる可能性があります。私が書類準備を管理するなら、各書類に「原本取得日」「アポスティーユ日」「翻訳者」「翻訳言語」「提出先」「提出期限」の欄を作ります。
IND申請で見られるその他の書類も並行して集めます
婚姻証明だけで申請は完結しません。INDの配偶者・パートナー滞在許可では、本人とスポンサーの有効なパスポート、申請フォーム、スポンサー宣誓、公共秩序に関するAntecedents Certificate、収入を示す資料、必要に応じた追加説明などが関係します。12歳以上の申請者は、過去の犯罪歴等に関するAppendix Antecedents Certificateを完全に記入して添付する必要があります。
日本人夫婦でありがちな失敗は、「戸籍の翻訳ができたから書類準備は終わり」と考えることです。実際には、スポンサーの雇用契約、給与明細、事業収入資料、滞在許可カード、同居予定住所、過去の離婚や氏名変更がある場合の資料も、案件により必要になります。INDのページには質問に答えて必要書類の概要を確認する導線がありますが、最終的には申請フォームと最新の公式案内で確認する必要があります。
スポンサー条件と収入要件
配偶者の家族帯同では、申請者本人よりも、オランダ側にいるスポンサーの条件が結果を左右します。スポンサーとは、配偶者をオランダに呼び寄せ、INDに対して一定の責任を負う人です。日本人同士の夫婦でも、先にオランダへ移る人がスポンサーになり、後から来る配偶者の滞在許可を支える構図になります。
スポンサーになれる滞在資格かを確認します
スポンサーは、オランダ国籍者、または有効なオランダ滞在許可を持つ人である必要があります。高度人材、EU Blue Card、研究者、自営業、永住などは配偶者帯同と組み合わせて検討されやすい一方、ワーキングホリデーやオペアなど、配偶者呼び寄せに使えない目的もあります。スポンサー本人の滞在許可が一時的なものか、更新見込みがあるか、期限がいつかも見ます。
スポンサーがオランダ国籍者または永住許可保持者の場合と、スポンサー自身も一時的な滞在許可を持つ場合では、配偶者の許可期間や就労条件が変わることがあります。INDは、配偶者の労働可否は滞在カード裏面の文言で確認すると説明しています。スポンサーが留学の滞在許可の場合、配偶者の就労が認められない扱いになるなど、生活設計に直結する違いがあります。
収入は独立・持続・十分の三つで見ます
INDの収入要件は、独立していること、持続していること、十分な額であることの三つで整理されています。給与所得なら、税・社会保険料が適切に扱われる合法的な雇用収入であること、契約期間や過去の平均収入が見られます。自営業やフリーランスなら、事業利益、税務上の利益、収入実績、事業計画が論点になりやすいです。
2026年6月15日時点で、INDのRequired amountsページでは、配偶者と暮らすための滞在許可について、2026年1月1日から6月30日までの目安額として、休暇手当なしのGross SV salary月額2,294.40ユーロ、休暇手当込みの月額2,477.95ユーロが表示されています。ただし、この金額は時期により変わります。申請時点の金額、収入源の種類、契約期間、過去収入の扱いを、提出直前に必ず公式ページで確認してください。
自営業スポンサーは「売上」ではなく「説明できる利益」を見ます
日本人移住では、片方が自営業や起業家としてオランダへ移り、もう片方を配偶者として帯同させるケースがあります。この場合、「売上がある」「日本の銀行残高がある」だけでは足りないことがあります。INDは、自営業収入について、合法的な事業から得た利益で税を納めること、原則として一定期間の収入実績があること、税務上の平均月間利益が必要額に届くことを説明しています。
一方、スタートアップや自営業の滞在許可と同時に配偶者・子どもの申請をする場合、INDは事業計画に示された見込み収入を見る場合があると説明しています。ここは案件により扱いが変わりやすい領域です。私なら、家族帯同を予定する起業家には、ビジネスプランを「自分のビザ用」だけでなく、「家族の生活費と帯同申請に耐える資料」としても整えるよう勧めます。
申請から到着後までの流れ
INDの配偶者・パートナー滞在許可ページでは、流れとして、要件確認、書類収集、申請、費用支払い、審査待ち、決定、滞在カード受取が示されています。MVVが必要な国籍では、MVVと滞在許可を同時に申請し、国外のオランダ公館でMVVを受け取る流れが入ります。日本国籍者はMVV免除のため、この一部が省略されますが、申請そのものが軽くなるわけではありません。
申請者ではなくスポンサーが主導する場面があります
INDのオンライン申請では、スポンサーがDigiDでログインして手続きを進める形が用意されています。紙の申請フォームもありますが、オンライン申請の方が支払いと添付が整理しやすい場合があります。申請フォームでは、スポンサーが配偶者を受け入れる意思と責任を示すことになります。スポンサーには情報提供義務や記録保管義務があるため、名義だけ貸すようなものではありません。
2026年6月15日時点で、INDの配偶者・パートナー滞在許可ページには申請費用254ユーロと表示されています。ただし、費用は改定されます。申請前に、最新の費用、支払い方法、フォーム番号、添付書類、写真やバイオメトリクスの案内を確認してください。公式ページの更新日は変わるため、古いブログ記事や体験談の金額をそのまま使うのは避けた方がよいです。
審査期間は90日が目安ですが、固定予定にしすぎないようにします
INDは、配偶者・パートナー滞在許可の決定期間を90日と案内しています。これは、常に90日ぴったりで結果が出るという意味ではありません。不足書類があれば追加提出の連絡が来ることがあり、その場合は時間が延びる可能性があります。逆に、早く結果が出る場合もあります。
日本人はMVV免除のため、審査前後にオランダへ行く選択肢を考えやすいです。しかし、短期滞在で入国できることと、長期滞在許可が下りることは別です。退職、引越し、子どもの学校、住居契約、健康保険、航空券を、審査結果が確定する前提で固定しすぎると、追加書類や審査遅延のときに調整が難しくなります。
到着後はBRP登録と滞在カード確認が続きます
許可が出た後も、手続きは終わりません。オランダに住む人の個人情報はBRPに記録され、婚姻、出生、住所なども自治体で扱われます。配偶者滞在許可では、二人が同じ住所で登録されることが重要です。自治体によって予約方法、必要書類、翻訳書類、原本確認の扱いが異なるため、引越し先のgemeenteの案内を確認してください。
滞在カードを受け取ったら、氏名、生年月日、有効期限、滞在目的、カード裏面の労働文言を確認します。スポンサーがオランダ国籍者の場合は自由就労が認められる扱いになることがありますが、スポンサーが別の滞在許可を持つ場合は、その労働権に連動することがあります。配偶者本人が到着後すぐ働く予定なら、内定や開業準備を進める前に、カード裏面の文言とINDの説明を照合してください。
提出前につまずきやすい点
日本で結婚した夫婦の配偶者帯同は、未婚パートナー申請より関係性を説明しやすい面があります。それでも、婚姻証明の形式、発行日、翻訳、アポスティーユ、スポンサー収入、同居住所のどれかが弱いと、追加確認になりやすいです。最後は「結婚しているか」ではなく、「INDと自治体が読める形で、条件を満たす書類になっているか」を確認します。
戸籍謄本をそのまま出せばよいとは限りません
戸籍謄本には婚姻情報が載りますが、日本語の戸籍をそのままオランダの制度に出せば十分とは限りません。アポスティーユ、宣誓翻訳、在オランダ日本国大使館の婚姻証明、オランダ外務省でのリーガリゼーションなど、提出先によって必要な形が変わります。NetherlandsWorldwideは、法的認証は文書の署名が正しいことを示すものであり、文書内容の真実性そのものを保証するものではないとも説明しています。
そのため、書類準備では「何を証明するための書類か」を先に決めます。婚姻の成立を示すのか、婚姻状態が継続していることを示すのか、過去の離婚や氏名変更を示すのか、自治体登録用なのか、IND申請用なのかで、必要な補助書類が変わります。戸籍、除籍、改製原戸籍が必要になる場合もあるため、過去の婚姻歴や氏名変更がある人は早めに洗い出してください。
90日滞在と申請中の生活設計を混ぜないようにします
日本国籍者はMVV免除で入国しやすいため、「先にオランダへ行ってから考える」動きになりがちです。けれども、短期滞在の90日ルール、IND申請中の扱い、BRP登録、賃貸契約、就労開始、健康保険加入は、それぞれ別の論点です。入国できることは、居住者として登録できることや働けることを意味しません。
特に、配偶者本人が日本の仕事を辞めてから渡航する場合、審査が想定より延びると生活費や保険の空白が起きやすいです。子どもがいる夫婦では、学校、予防接種記録、出生証明、親権関係の書類も関係することがあります。この記事では夫婦の配偶者申請に絞っていますが、家族全体で移る場合は、子ども分の申請と自治体登録も別途確認してください。
提出前チェックは書類名ではなく整合性で見ます
最後の確認では、書類名をそろえるだけでなく、全体の整合性を見ます。婚姻証明に記載された氏名、パスポートのローマ字表記、戸籍上の氏名変更、スポンサーの住所、賃貸契約、申請フォームの住所、雇用契約の会社名、給与明細の金額、銀行入金、税務書類の日付が、互いに矛盾していないかを確認します。
チェックリストは、スポンサーの在留資格、配偶者の国籍、MVV要否、婚姻書類、アポスティーユ、翻訳、収入、同居住所、申請費用、審査期間、BRP登録、滞在カード受取、就労文言の順に並べると整理しやすいです。私自身も、行政手続きでは「公式ページを読んだか」より、「どの書類がどの条件を満たすためのものか」を表にできているかで準備の精度が変わると感じます。
配偶者の家族帯同は、夫婦であることを前提にしつつ、スポンサーの生活基盤をINDに示す手続きです。日本人はMVV免除という利点がありますが、その分、短期滞在の感覚で長期居住の準備を始めてしまう落とし穴もあります。日本の婚姻書類をオランダ側が読める形に整え、収入と同居住所を確認し、申請時点の公式情報で最後に見直すことが、もっとも現実的な進め方です。