TL;DR: オランダで緊急時にかける番号は用途別に分かれています。生命の危険・犯罪・火災・救急112 (24 時間、英語対応可)。希死念慮・自殺の悩み113 (旧称 1813、24 時間、英語対応可、無料)。DV・児童虐待・高齢者虐待1414 (Veilig Thuis、平日昼間中心、緊急時は 112)。日本の「110/119 で全部」のような単一番号ではないので、移住直後にこの 3 つを区別して頭に入れておくと、いざというときの判断が一拍早くなります。日本語対応は限定的なので、簡単な英語フレーズもあわせて準備しておくのが現実解です。

なぜ「緊急番号の使い分け」を 1 本にまとめるのか

日本では緊急時の番号は「警察 110 / 救急・消防 119」の 2 系統がほぼすべてで、迷うことはほとんどありません。ところがオランダに来ると、生命の危険を伴う緊急通報 (112) のほかに、希死念慮ホットライン (113) や DV 相談窓口 (1414) など用途別の専用番号が分かれており、最初は「結局どこにかければいいのか」が直感的に分かりません。

私自身、移住後しばらくは「家族の体調が悪いとき、これは 112 案件なのか huisartsenpost (夜間休日 GP) 案件なのか」を毎回迷っていました。判断の枠組みを 1 本のメモにまとめておけば、いざというときに冷たい頭で動けます。

本記事の射程

  • 対象読者: オランダに住んでいる、または近々移住する日本人。家族 (子・配偶者・高齢の親) を伴う方は特に必読
  • 対象外: 法的助言・医療助言。本記事は「どの番号にかけるかの判断材料」を提供するもので、個別の医療判断・法的判断は専門家に委ねてください
  • 更新性: 番号自体は安定していますが、運営体制・対応時間は時々変わるため、緊急時に備えて年 1 回は公式サイト (112.nl / 113.nl / veiligthuis.nl) で最新状況を確認することをおすすめします

3 つの番号の一覧

| 番号 | 用途 | 対応時間 | 主な言語 | 料金 ||---|---|---|---|---|| 112 | 警察・消防・救急 (生命の危険・犯罪・火災) | 24 時間 365 日 | 蘭・英 | 無料 || 113 | 希死念慮・自殺の悩み (旧 1813) | 24 時間 365 日 | 蘭・英 | 無料 || 1414 | DV・児童虐待・高齢者虐待 (Veilig Thuis) | 24 時間 (緊急時) | 蘭中心、英は要相談 | 無料 |

生命の危険があるかどうか」が最初の分岐です。生命の危険がある or 犯罪が進行中なら 112。本人の希死念慮の悩みなら 113。家庭内の暴力・虐待で生命の危険は今すぐではないが相談したいなら 1414。生命の危険がある DV は 112 に直接。

112 — 警察・消防・救急 (生命の危険・犯罪・火災)

112 はオランダの統合緊急通報番号で、警察 (Politie)、消防 (Brandweer)、救急 (Ambulance) の 3 系統をすべて 1 つの番号でカバーします。EU 全域で共通の緊急番号でもあり、他の EU 諸国に旅行中でも同じ番号が使えます。

いつ 112 にかけるか

公式 (https://www.112.nl/) の定義は「人命が危機にあるとき、または犯罪が進行中のとき」です。具体的なシナリオ:

  • 交通事故 (重傷者あり、または救急車が必要)
  • 火災 (家屋・車両・森林、煙が大量)
  • 強盗・暴行・侵入が進行中
  • 心臓発作・脳卒中・呼吸困難・大量出血
  • 子どもや高齢者の急変 (意識喪失・痙攣・激しい嘔吐継続)
  • 溺水・転落・電気事故

いつ 112 にかけないか

逆に、112 ではなく別の窓口を使うべきケース:

  • 体調不良だが生命の危険はない → huisarts (家庭医) または huisartsenpost (夜間休日 GP、0900-xxxx 番号)
  • 物損のみの軽微事故 (自分の家・自分の車) → 保険会社直接
  • 騒音苦情・喧嘩仲裁 (生命の危険なし) → 警察非緊急番号 0900-8844
  • 道路の穴・倒木 (危険はあるが緊急ではない) → 自治体 (gemeente)

生命の危険があるか、犯罪が今まさに進行しているか」がほぼ唯一の判断軸です。迷ったらかけてください、と公式も明記しています。

通報時に何を伝えるか

オペレーターはまず「Politie, brandweer, of ambulance?」(警察・消防・救急のどれ?) を聞きます。蘭語に自信がなければ「English please」と即答すれば英語対応に切り替わります。続いて聞かれる内容:

  1. 何が起きているか (1 文で簡潔に)
  2. 場所 (住所 + 建物名、または最寄りの目印)
  3. 負傷者の有無と人数
  4. あなたの名前と電話番号

英語フレーズ例:- "There is a fire at [住所]."- "Someone is having a heart attack at [住所]."- "There is a car accident on [道路名], two people injured."

モバイルからの通報

携帯電話からの 112 通報は GPS で位置情報が自動送信される仕組み (AML / Advanced Mobile Location) があり、住所を正確に言えなくても位置は把握されます。ただし建物階数や部屋番号までは送信されないので、可能なら口頭で補足してください。

聾者・難聴者向け

聴覚に障害がある方向けには 専用テキスト/ビデオ通報サービス が用意されています。事前登録が必要なので、該当する方は 112.nl の "Doof of slechthorend" セクションを確認してください。

113 — 希死念慮・自殺の悩み (旧 1813)

113 Zelfmoordpreventie は、希死念慮を抱える本人・家族・友人のためのホットラインです。かつての番号 0900-0113 から、短縮番号 113 に統合された経緯があり、一部の文献では「1813」と紹介されているものもありますが、現在の公式運用は 113.nl に集約されています。本記事タイトルは旧表記との互換性のために「1813」を残しています。

いつ 113 にかけるか

公式 (https://www.113.nl/) のサービス内容:

  • 本人が死にたいと考えているとき
  • 家族・友人が希死念慮を持っていて心配なとき
  • 過去の自殺企図からの回復過程で支援が必要なとき
  • 遺族としての悲嘆ケアが必要なとき

今この瞬間に危機がある」(自殺企図中・直後) なら、113 ではなく 112 に連絡してください。113 は相談・支援の枠組みで、緊急救命は 112 の役割です。

連絡手段

113 は電話だけでなく複数チャネルを持っています:

  • 電話: 113 (短縮) または 0800-0113 (フリーダイヤル)、24 時間
  • チャット: 113.nl サイト上で匿名チャット、24 時間
  • メール: サイト経由
  • 自助プログラム: オンラインのセルフヘルプコース

電話は心理的ハードルが高い場合もあるので、チャット入口が用意されているのは大きな利点です。

英語・他言語対応

113 のスタッフは英語で対応可能と明記されています。日本語対応は基本的にありません。日本語での相談を希望する場合は、後述の在オランダ日本国大使館の領事窓口や、日本国内の「よりそいホットライン (0120-279-338)」を国際電話で利用する選択肢があります。

料金

電話・チャットとも完全無料で、匿名で利用できます。健康保険番号や BSN を求められることはありません。

関連リソース

  • MIND Korrelatie (心理相談、希死念慮以外も含む): 0900-1450
  • Sensoor (24 時間心の相談): 0900-0767
  • GGZ (オランダの精神医療システム、長期治療): huisarts 経由で紹介

これらの番号は希死念慮以外の心の悩み・孤独感・人間関係の困りごとなどに使えます。

1414 — Veilig Thuis (DV・児童虐待・高齢者虐待)

1414 (Veilig Thuis) は、家庭内暴力 (DV)・児童虐待・高齢者虐待に特化した相談窓口です。Veilig Thuis は「安全な家」という意味のオランダ語で、被害者本人だけでなく、目撃者・関係者・加害者本人も相談できます。

いつ 1414 にかけるか

公式 (https://veiligthuis.nl/) の対象範囲:

  • 配偶者・パートナー間の身体的・精神的・経済的暴力
  • 子どもへの身体的暴力・ネグレクト・性的虐待
  • 高齢者への虐待・経済的搾取・ネグレクト
  • 名誉関連暴力 (honor-based violence)
  • 強制結婚・人身取引の疑い
  • 目撃者として隣家・知人の状況が心配なとき

今、命の危険がある」DV や子どもへの暴行が進行中なら、まず 112 に通報してください。1414 は相談・介入計画・支援接続を担当する継続的な窓口です。

連絡手段

  • 電話: 1414 (短縮、24 時間)、または 0800-2000 (フリーダイヤル)
  • チャット: 平日・週末の昼間中心、veiligthuis.nl サイト上で
  • 対面: 地域の Veilig Thuis オフィスで予約面談 (gemeente 経由)

言語対応

スタッフは蘭語が基本で、英語対応は地域とタイミングによる運用です。Veilig Thuis は 26 の地域組織で構成されており、地域差があります。英語対応を希望する場合は最初に「English please」と申し出てください。日本語対応はありません。

通報後の流れ

Veilig Thuis に通報すると、ケースワーカーが状況評価を行い、必要に応じて:

  • 警察 (112 経由ではない非緊急ルート) との連携
  • 子どもの場合は Raad voor de Kinderbescherming (児童保護評議会) との連携
  • 一時保護施設 (Blijf Groep など) への紹介
  • 加害者向けカウンセリング (De Waag など) への紹介
  • 司法手続き (接近禁止命令など) の支援

通報者の身元は保護され、被害者本人の同意なしに警察に転送されることはありません (生命の危険が切迫している場合を除く)。

子どもの安全を心配するとき

隣家から子どもの泣き声が頻繁に聞こえる」「知人の家族で子どもの様子が気になる」というような目撃者ベースの相談も歓迎されています。確証がなくても、相談すること自体が問題ではありません。Veilig Thuis のケースワーカーが状況評価を行います。

日本人向けの追加リソース — 日本語サポート

公的 3 番号 (112 / 113 / 1414) の日本語対応はほぼ期待できません。日本語で支援が必要な場合の補完リソースを整理します。

在オランダ日本国大使館 (領事窓口)

  • URL: https://nl.emb-japan.go.jp/
  • 電話: 大使館代表番号 (公式サイト参照、変更あり)
  • 役割: 重大事件・事故・災害時の領事援護、邦人の安否確認、入院時の通訳手配 (緊急時)
  • 注意: 緊急医療・緊急救命は 112、心理相談は 113、DV は 1414 が一次窓口。大使館は領事業務の枠で支援します

在留届と「たびレジ」

事前に 在留届 (3 ヶ月以上滞在の場合は法令義務) を提出しておくと、災害時・領事関連の連絡がスムーズになります。短期滞在でも「たびレジ」登録で外務省からの緊急情報を受け取れます。

日本国内の 24 時間相談窓口 (国際電話で利用可)

  • よりそいホットライン: 0120-279-338 (日本国内無料、国際電話扱いで NL からも可能)
  • いのちの電話: 各都道府県の窓口、国際電話で利用可能
  • 女性の人権ホットライン: 0570-070-810 (法務省、平日昼間)

国際電話料金は発生しますが、母語での相談が必要な状況では選択肢に入れる価値があります。

NL 在住日本人コミュニティ

  • オランダ日本人補習校 (アムステルダム / ロッテルダム) の保護者ネットワーク
  • Facebook グループ (オランダ在住日本人 / NL 日本人ママ会など)
  • Telegram / LINE グループ (地域別)

非公式ですが、子育て・DV・心の悩みについて日本語で相談できる仲間がいる安心感は大きいです。ただし機密性・専門性は保証されないため、公的窓口との併用が前提です。

緊急通報前のチェックリスト

実際に番号を押す前の 30 秒で確認したいこと。

1. 自分・周囲の安全確保

  • 火災なら退避
  • 暴力なら距離を取る
  • 交通事故なら二次事故防止 (ハザード・三角板)

2. 場所を 1 文で言えるか

  • 番地まで含む住所、または最寄りの目印 (橋・公園・店舗名)
  • 屋内なら建物名 + 階数 + 部屋番号
  • 高速道路なら方向 + 距離標識 (hectometerpaaltje) の番号

3. 何が起きたか 1 文で言えるか

  • 5W1H のうち最低 What と Where
  • 負傷者の有無と意識・呼吸状態
  • 危険物の有無 (ガス漏れ・電気・化学物質)

4. 通報後にしないこと

  • 電話を切らない (オペレーターが指示を続ける)
  • 現場を離れない (救急隊が到着するまで)
  • 負傷者を不用意に動かさない (脊損リスク)

子ども・高齢の家族への教育

家族全員が緊急番号を知っているかは、移住後 1 ヶ月以内に確認しておきたいポイントです。

子ども向け

  • 「困ったら 112 に電話」を絵カードや冷蔵庫メモで掲示
  • 自宅住所を蘭語と英語で言えるよう練習
  • 学校の連絡先 (基本は学校の事務、緊急時は 112)
  • 親の携帯番号を暗記 or キッズ携帯に登録

高齢の親 (来訪・同居)

  • 緊急時の英語フレーズカード (財布に入れる)
  • 健康保険証 (zorgverzekering) のカード携帯
  • 持病・服薬リストを英語で常備
  • 在留届を提出 (3 ヶ月以上滞在の場合)

自宅の冷蔵庫メモ

| 用途 | 番号 ||---|---|| 警察・消防・救急 | 112 || 希死念慮の相談 | 113 || DV・児童虐待 | 1414 || 夜間休日 GP | huisartsenpost: 0900-xxxx (地域別) || 警察非緊急 | 0900-8844 || 日本大使館 | 大使館公式番号 || かかりつけ huisarts | 個人の番号 |

これを A4 1 枚にまとめて冷蔵庫に貼っておくのが、私が移住直後に最初にやったことのひとつです。

まとめ — 5 ポイント

  1. 生命の危険・犯罪・火災は 112。EU 全域共通の統合緊急番号、24 時間、英語対応可。
  2. 希死念慮の相談は 113 (旧 1813)。24 時間、無料、英語対応可、電話とチャット両方。
  3. DV・児童虐待は 1414 (Veilig Thuis)。本人・目撃者・関係者すべて相談可、地域組織制。
  4. 日本語対応は限定的。よりそいホットライン国際電話・日本大使館領事窓口・日本人コミュニティを補完的に活用。
  5. 冷蔵庫メモと家族教育 を移住 1 ヶ月以内に。子ども・高齢の親も含めて家族全員が番号を知っている状態を作る。

緊急時の判断は冷静でいられるとは限りません。だからこそ「生命の危険なら 112」というシンプルな第一歩を、家族全員の頭に最初に入れておくことが、移住生活の安心の基礎になります。

免責: 本記事は一般情報で、医療・法的アドバイスではありません。緊急時の具体的な判断は、必ず公式窓口 (112 / 113 / 1414) のオペレーターの指示に従ってください。番号・対応時間・サービス内容は変更される可能性があるため、年 1 回程度は公式サイト (112.nl / 113.nl / veiligthuis.nl) で最新情報をご確認ください。仁田坂は 2025 年からオランダ在住の実体験を共有していますが、医療従事者・心理職・社会福祉専門家ではありません。